【
第一部 フリーエージェント時代の幕開け 】
【 第1章 組織人間の時代の終わり
】
<キーセンテンス>
この本のテーマは、フリーエージェントである。この言葉が曖昧に感じられたとしても、私はこれ以
外にこの本で取り上げようとしている人たちを表現する言葉を思いつかない。大きな組織にしばられ
ることなく、自分の未来を自らの手で切り開くフリーエージェントたちは、アメリカの労働者の新しい
モデルになりはじめている。自由気ままな独立した労働者が経済の新しいシンボルになりつつある。
<キーワード: テイラーメード主義(Tailorism)>
フリーエージェントの人たちの仕事に対する姿勢。大量生産体制を整えるためにフレデリック・ウィン
スロー・テイラーが提唱した画一的な「科学的管理法 〜テイラー主義(Taylorism)〜」に代わる概
念である。テイラーメード主義の下では、人々は従来の画一的な価値観やルール、システムに縛ら
れることなく、自分のニーズや希望に応じて仕事の仕方を決める。オーガニゼーション・マンの時代
に全員が同じ「共通サイズの服」を着ていたのに対し、フリーエージェントは「自分サイズの服」を着
るのだ。
【
第2章 3300万人のフリーエージェントたち 】
<キーセンテンス>
フリーエージェントの人たち、ひいては労働者全般は、「雇用主」と「被雇用者」にきれいに線引きで
きなくなっている。フリーエージェントは雇用主でも被雇用者でもない。と言うより、雇用主でもあり
被雇用者でもあるのだ。禅問答のように聞こえるかもしれないが、これがニューエコノミーの重要な
特徴なのだ。
<キーワード: ナノコープ(Nanocorp)>
「拡大を目指さない」という方針を容赦ないまでに追求している超ミニ企業。小規模のままでいるこ
とは、オーナーの個人的な志向でもあり、競争力を得るための戦略でもある。
【 第3章 デジタルマルクス主義の登場
】
<キーセンテンス>
ネットスケープが誕生したのは1994年。翌95年には株式公開を果たした。しかし99年には、もう
この世から消えてなくなっていた。大手インターネット接続業者のアメリカ・オンライン(AOL)に吸収
合併されたのだ。この会社の寿命はたったの4年だった。
<キーワード: デジタルマルクス主義(Digital Marxism)>
コンピュータが安価になり、携帯型の端末が普及し、どこにいても地球規模のネットワークに接続で
きるようになったおかげで、労働者は再び生産手段を手にするすることができるようになった。
【 第二部 働き方の新たな常識
】
【 第4章 新しい労働倫理
】
<キーセンテンス>
パフ・ダディの言葉よりも、ボブ・ディランの言っていることのほうが正しいようだ。「成功したと言える
のは、朝起きて、自分のやりたいことをやれる人だ」と、ディランは歌っている。
<キーワード: ピーターアウトの法則(The Peter-Out Principle)>
ピーターの法則とは、階層社会の構成員は、自分の能力を超えた地位まで昇進するという法則だっ
た。しかし今は、ピーターアウト(=次第になくなる)の法則の時代。出世するにつれて、だんだん仕
事が楽しくなくなり、やがて優秀な人材は会社を出て行ってしまう。
【 第5章 仕事のポートフォリオと分散投資
】
<キーセンテンス>
自由は、かつて安定を得るうえでは回り道だったが、今は安定を得るための近道になったのだ。
<キーワード: ヨコの忠誠心(Horizontal Loyalty)>
上司や組織に対するタテの忠誠心に代わって登場した。タテの忠誠心と違ってヨコの忠誠心は、た
いてい双方向的なものだ。忠誠の対象は、チームや同僚、元の同僚、顧客、業界や職業、家族や友
人である。
【 第6章 仕事と時間の曖昧な関係
】
<キーセンテンス>
工場のホイッスルが1日の始まりと終わりを告げた時代と違って、仕事とプライベートの境界線はす
っかり曖昧になった。夜10時に自宅の書斎で顧客の電子メールに返事を書くような場合、どの時点
で仕事が終わってプライベートな時間が始まるのか? 時間に対する不満を生んでいるのは、この
ように仕事とプライベートの区別がつきにくい状況によるものかもしれない。
<キーワード :ニューエコノミーのセブンイレブン(New Economy 7-Eleven)>
フリーエージェントは、完全に「オフ(仕事時間外)」の状態になることはほとんどない。24時間営業
のコンビニエンスストアと同じように、客がいなくて店が空っぽのときも、店を閉めることはないのだ。
【 第三部 組織に縛られない生き方
】
【 第7章 人と人の新しい結びつき
】
<キーセンテンス>
FANクラブは、企業の取締役会のような一面がある一方で、心理療法のグループ療法のような一面
もある。顧客探しの場であると同時に、生きがい探しの場でもある。こうしたグループは、私利私欲
によって生まれ、メンバーの信頼に支えられて存続する。
<キーワード :フリーエージェント連合(Confederation)>
フリーエージェントが協力して仕事をするチーム。法律事務所や会計事務所などのパートナーシッ
プと呼ばれる形態と似ているが、メンバー同士の関係はもっと流動的で、組織や運営の決まりごと
は契約ではなく、明文化されていない約束によって決められている。
【 第8章 互恵的な利他主義
】
<キーセンテンス>
フリーエージェントの組織図は流動的なものだ。流動的なものだから、ピラミッド型の構造になること
もほとんどない。あるプロジェクトでは同格のスタッフだった人間が、別のプロジェクトではボスにな
ることもある。今の仕事の下請け業者が、明日は依頼主になるかもしれない。フリーエージェントの
組織図は、従来の企業の組織図よりも、むしろ人間の脳に似ている。私たちの脳の中では、古いニ
ューロンと新しいニューロンが絶えず結びつき、離れてはまた結びついて、新しい回路をつくってい
る。私たちはこうして、ものを考え、ものを学び、ものを記憶するのだ。従来の20世紀型の雇用形態
に比べ、フリーエージェントという働き方のほうが人間の性質に調和しているのは、もしかするとこの
ためなのかもしれない。
<キーワード :フリーエージェントのOS(Free Agent Operating System)>
コンピュータのOSであるウィンドウズやDOSやリナックスと同じように、フリーエージェントのOSは、
フリーエージェント経済が機能する土台となっている。その基本的な構成要素は“信頼”である。こ
の信頼は互恵的な利他主義という形をとる。
【 第9章 オフィスに代わる「第三の場所」
】
<キーセンテンス>
スターバックスに行けば値段はちょっと高くても、おいしいコーヒーが飲めるということは誰でも知っ
ている。けれども、ほとんどの人が気がついていないのは、スターバックスは消費者向け飲料ビジネ
スの企業ではないということだ。実体を見れば、事業用不動産ビジネスの会社と言ったほうがいい。
私をはじめ大勢のフリーエージェントにとって、コーヒーショップは、オフィスとして機能しているから
だ。
<キーワード :フリーエージェントのインフラストラクチャー(Free Agent Infrastracture)>
フリーエージェント経済が機能する物理的な土台。民間の手で、自発的に組織されている。
【 第10章 仲介業者、エージェント、コーチ
】
<キーセンテンス>
コーチは診察椅子をもたない精神科医であり、フローチャートをもたない経営コンサルタントであり、
ショットグラスをもたない聞き上手のバーテンダーでもある。
<キーワード :会社版「お節介おばさん」(Corporate Yenta)>
短期的に人材を必要としている企業にフリーエージェントを引き合わせるビジネス。
【 第11章 「自分サイズ」のライフスタイル
】
<キーセンテンス>
フリーエージェントのカップルという形態は、いまになって生まれたものではない。工業経済の時代
になるまでは、夫婦はたいてい一緒に働いていた。インターネットの登場により、そうした夫婦の商
売は必ずしも零細ビジネスとは限らなくなった。
<キーワード :通勤夫婦(Commuter Marriages)>
夫婦ともに会社などに勤務し、子供をもっている夫婦によく見られる状態。毎朝、慌ただしく子供を託
児所や学校に送り届け、勤務先に出勤し、夕方はその逆の順番で慌ただしく家に帰る。毎日がその
繰り返しで過ぎていく。
【 第四部 フリーエージェントを妨げるもの
】
【 第12章 古い制度と現実のギャップ
】
<キーセンテンス>
いま雇用主を通じて医療保険の適用を受けているアメリカ人は、幸せを噛みしめたほうがいい。
そもそもは、現在のような制度になるはずではなかったのだ。
<キーワード :コブラ・ベビー(COBRA Baby)>
勤務先を退職したフリーエージェントが退職後18ヶ月以内につくった子供。アメリカでは、「包括財
政調整法(略称:COBRA=コブラ)」という法律によって、雇用主は退職した従業員が自責で医療保
険料を支払い続ける場合は、退職後18ヶ月間は医療保険を提供し続けなければならないことにな
っている。フリーエージェントのなかには、この制度を利用して子供をつくる人が少なくない。
【 第13章 万年臨時社員と新しい労働運動
】
<キーセンテンス>
テンプ・スレーブは、マズローの「欲求のピラミッド」を登ることはないし、FANクラブの会合で、映画
『ザ・エージェント』の意味を話し合ったりもしない。そんなものとは無縁の生活だ。この人たちは、
アメリカの労働者のなかで最も不満を抱いている人たちと言ってもいい。
<キーワード :万年臨時社員(Permatemp)>
正社員と机を並べて同じ仕事をしているのに、臨時社員という扱いであるために、医療保険や年金、
ストックオプションなども与えられていない人たち。
【 第五部 未来の社会はこう変わる
】
【 第14章 リタイヤからeリタイヤへ
】
<キーセンテンス>
ベビーブーム世代がこれから両親から相続すると見込まれている金額は、総額で10兆ドルを上回
る。もちろん、遺産は高価な美容整形や着心地のよい水着を買うためにも使われるだろう。それでも
フリーエージェントとして再出発するための軍資金はたっぷりと残るはずだ。
<キーワード :eリタイヤ(E-tirement)>
人生の新しい階段。65歳を過ぎても、これまでのように引退(リタイヤ)するのではなく、インターネ
ットを駆使してフリーエージェントとして働くことを言う。
【 第15章 テイラーメード主義の教育
】
<キーセンテンス>
私たちは、従来の典型的な学校に足を踏み入れるとき、過去に足を踏み入れているのだ。それは、
フレデリック・ウィンスロー・テイラーが設計し、オーガニゼーション・マンが住む場所である。アメリ
カ社会の中で、フリーエージェント経済の価値観や形態に最も適応できていない機関は、アメリカ人
が最も重要だと言い続けてきた機関…すなわち学校なのだ。
<キーワード :「感謝祭のターキー」型の教育(Thanksgiving Turkey Model)>
20世紀に主流だった教育モデル。社会は公教育というオーブンの中に子供を12年間入れて、しっ
かり焼けたら、企業などの雇用主に引き渡していた。選ばれた一部は、大学という名前の場所であ
と4年間、最後の仕上げをされた。
【 第16章 生活空間と仕事場の緩やかな融合
】
<キーセンテンス>
「フリーエージェントの山小屋」では、フリーエージェントたちが集まって、前の晩のテレビドラマの話
題で盛り上がったり、仲間と一緒に共同のプロジェクトに取り組んだりすることができる。この「山小
屋」は、仕事場といってもキュービクル(個人用の間仕切りスペース)全盛の90年代のオフィスより
もキンコーズやスターバックスに近い。フリーエージェントたちは金を払って会員になり、同僚と噂話
に花を咲かせたり、仕事中に誰かに話しかけられるなど、いまは会社勤めの嫌な点だと思っている
ことをするために、こうした仕事場に出かけていくようになる。
<キーワード :HOHO(His Office / Her Office)>
「SOHO(Small Office / Home Office)の変形版。カップルが自宅内にそれぞれ個人用のオフィ
スをもつ家庭のこと。
【 第17章 個人が株式を発行する
】
<キーセンテンス>
プロボクサーのなかには、投資家に株式を売って、トレーニング資金を調達している人もすでに大勢
いる。アメリカのプロボクサーの10人に1人は、こうした方法で資金を得ている。次の戦いの準備を
する資金を手にするために自由をある程度手放しても構わないと考えるのは、プロボクサーだけで
はないだろう。フリーランスで働く人のなかにも、こうしたプロボクサーと同じ道を選択する人もいる
かもしれない。
<キーワード :FAN債(F.A.N.Bonds)>
フリーエージェント版の社債。学生ローンより利用しやすいが、クレジットカードより金利は低い。FA
N債市場を活性化させるためには、連邦抵当金庫(ファニー・メイ)が住宅ローンの社債を大量に買
い取って、証券化して投資化に販売しているように、FAN債を買い取っ、て証券化する仕組みが必
要になるだろう。
【 第18章 ジャストインタイム政治
】
<キーセンテンス>
大手の政治家は、斜陽の古いグループにこだわり続けて、上潮の若いグループを黙殺している。た
とえフリーエージェントに目を向けることがあっても、共和党は、政府に敵対的で強欲な連中という
見方しかしないし、民主党は、抑圧された「臨時」労働力としてしか見ない。
<キーワード :ジャストインタイム政治(Just−in−time Politics)>
ジャストインタイムの生産システムの政治版。いまの政治家に求められるのは、支持層を固めてそ
れを守ろうとするのではなく、目の前の政治課題に対応するための政治的連合をその都度リアルタ
イムで築いていくことだ。
【 第19章 ビジネス、キャリア、コミュニティーの未来像
】
<キーセンテンス>
「規模の経済」の恩恵を受ける企業は、とほうもなく巨大化し国家の規模に近づく。一方、企業の小
規模化もさらに進行し、フリーランスやミニ企業は増え続ける。しかし、その中間サイズの企業は消
滅したり、存在感が薄まっていく。新しい経済の生態系では、たくさんの象と、もっとたくさんのネズミ
が活躍し、その中間の大きさの種はほろんでいくのだ。
<キーワード :レゴ型のキャリア(Lego Careers)>
私たちのキャリアは、あらかじめ用意された梯子を一段一段、決められた方法で上がっていくだけで
はなくなる。選択肢はもっと多様になる。レゴのブロックで遊ぶ子供のように、コネや技術、意欲、機
会などのブロックを使って、自分なりのキャリアの積み木をつくり、やがてまた新しい積み木をつくり
直していく。組み立て方は無限にある。
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